建築家安藤忠雄さんの「本福寺」
淡路島のお寺です。
安藤さんの作品ではこれが一番好きです。
使用できる画像がないので載せませんが、ご興味ある方は検索されてみてください。
一見したところお寺とはわかりません。
蓮の池の下にお堂があるというつくり。
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安藤さんはこの依頼が来たとき、仏教について調べお寺の本質とはなにかということを考えたそうです。
地域の人たちが「うちの地元にはこんなお寺がある」と誇りに思えるような。
「たまには1日あのお寺で過ごしたい」と思えるような。そういうものを目指した。
人々が自由に来られて、心が和み豊かになるような。下町の神社のように。
それが本来のお寺なのではないかと考えた。
そして
通常のお寺はまず大屋根が思い浮かびますが、あれは檀家が多ければ多いほど大きくなる。
経済力があることを誇示していて権威の象徴でもある。
そんなものはいらない。ばっさりカット。
そのかわりに蓮の浮かぶ池を大屋根として持って来た。
仏像は蓮の上に座っている。蓮の花は仏の教えの象徴でもあります。
そして池であれば立地の景観を損なうこともない。
これが基本コンセプト。
僕がよくいう「コンセプトワーク」です(笑)
さらに西方浄土の考え方からお堂内に西日が入るよう設計されており、燃えるような真っ赤な室内になるそうです。朱色は仏教の原点。
飾らない外装と打って変わり内部は非常に荘厳な空間になるよう設計されています。
安藤さんはただ奇抜さを求めてこのようなデザインを考えたわけではなく、お寺の本質とはなにかを考え、それを形にしていったのです。
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ですが、このような奇抜な(ふつうは思うw)お寺のデザインがすんなり通るわけもありません。
お寺も檀家さんも反対です。
ところが檀家の総代をされていた三洋電機会長の井植さんは面白いとおっしゃった。
そこでお寺側では宗派の高僧にお伺いを立てることにしました。
反対意見の切り札としてです。
ところが齢九十になる高僧の方々は「素晴らしい。冥土の土産にぜひ一度目にしたいものだ」とおっしゃった。
そのあとはお寺側も檀家の皆さんもみな賛成へ(笑)
このデザインは採用となりました。
安藤さんは「皆さん、あれほど反対されたではないですか」と。
「それは安藤さんの空耳ですよ」
笑い話のようですが、企画が通ったにもかかわらず安藤さんは暗い気持ちになったそうです。
権威者の発言に付和雷同する人たち。
日本はなんという社会なんだと思われた。
ちなみに、これは「光の教会」の後の作品です。
安藤さん教会多いです。
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安藤さんは世界的な建築家として名を馳せていらっしゃいますが、ひとつひとつのお仕事ではこんなお話が多く、あの安藤さんにお願いしたんだから、とすんなり仕事が進んでいくわけではないことがわかります。
また自主プレゼンもかなりされています。
ご本人曰く「頼まれてもいないのに」あそこの公会堂をこうしたらどうかなどと役所に突撃する。
その段階で建築模型も作って行かれます。
同じくすんなりことは運ばないのですが、何年もかけて実現されるものも多い。
これらは安藤さんの本で読んだのですが、
自分がこのような仕事をするなどとまったく考えていない二十代中頃に、なんとなく著書を読みまして。安藤さんのこともまったく知らない状態で(笑)
面白くて惹き込まれたんですよね。
今も時折その本を開きます。
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新国立競技場の件では叩かれたりもされましたが、
この本福寺のような本質を捉えた企画力(この場合はお坊さんにとって痛い所ともいえるw)や、自主プレゼンを粘り強く行う安藤さんの姿勢が好きです。
「頼まれてもいないのに」という言葉は小山薫堂さんも著書で使われていまして、僕の好きな言葉のひとつです。僕の仕事観のベースになってると思います。
前回書いた「ふじようちえん」も建築ですが、広告だけでなく様々なジャンルの優れた企画が好きです。